■うつ病
●うつ病とは、ゆううつ感や、無気力な状態が長い期間続いたり、なかなか回復せずに、日常生活にも支障をきたすような状態と言われています。
また、気分や心の症状だけでなく、だるさ、不眠、頭痛、食欲低下などの身体の症状を伴う場合も多くみられます。
●うつ病の心理的な症状
*気分が落ちこむ
*趣味に関心がわかない *自信がなくなる
*気疲れしやすい
*物事をするのがおっくうになる
*何とかしなくてはと気があせる
*ささいなことを繰り返して考える
*集中力が落ちて、うっかりミスが多くなる
*決断がなかなかできない
*何事も悲観的に考える
●うつ病の身体的な症状
*睡眠不良(眠りにくい、途中で目が覚める、朝早く目が覚める)
*食欲不振、食べてもおいしくない *性的な興味が減退
*全身倦怠感、頭痛、肩こり、胸が苦しい、胸やけ、便秘・下痢
★心理的な気分の落ち込みにあわせて不眠や食欲不振などの身体の症状が長い期間つづく。
★ゆううつ感や、無気力な状態で日常生活に支障をきたすことが2週間以上続く。
★気分の落ち込みが一日の中で変化する(日内変動)、朝に重くて、夕方に軽くなる、
またはその逆 のケース。
・・・このような場合などは、うつ病の可能性が疑われます。
●うつ病の発症の要因
*一般的に、まじめな性格、責任感が強い、完璧主義などの性格傾向がある人が「うつ病」にな
りやすいといわれていますが、個人の性格や性質に関係なく、過度のストレス、環境の変化や
状況が発症の大きな要因になっていると言われています。
*家庭・学校・職場での人間関係でのストレス
*出産・育児等でのストレス
*身近な人のとの離別(死亡、離婚、失恋)
*退学・失業・転職での環境変化や、経済的状況の変化
*転校・入学・転勤・昇進・結婚等での環境や状況の変化
*事故・事件・災害による心理的なショック
*本人の病気、身近な人の病気
★原因には昇進・合格・結婚などの良い事がきっかけになる場合もあります。また、心理的・社会的
ストレス以外にも、脳内の変化によって発症する場合もあります。(内因性うつ病)
★家族や周囲の人が「うつ病」になった時には、早期に発見し適切な治療が行えるように支える事が大切です。本人が悩みや辛さから、職場や学校を休んだり、家事などに支障をきたすことがありますが、うつ病の場合には、単なる怠慢やサボリとは違うことを理解してあげる事が必要です。
*「怠け者」「だらしない」と責めたり、逆に「がんばれ」「しっかり」などの「励まし」は余計に精神的な負担をかけて、本来が生真面目な性格の患者を追い詰めてしまうことになります。
●うつ病のタイプ
「うつ病」にはタイプがあります。
(内因性うつ病)・・・原因不明で、遺伝、個人の性格、体質により発症すると思われるもので、脳内の変化により発症する場合があります。外的原因の有無や、原因の性質(良い出来事・悪い出来事)にかかわらず発症する場合があります。
また、「内因性うつ病」にはうつ状態が1回又は繰り返しおこる単極性うつ病や、うつ状態とそう状態が交互におこる「躁うつ病」の双極性うつ病があります。
(心因性うつ病)・・・個人の性格がベースになって、過度のストレスや環境の変化などの、心理的ストレスや精神的ショックが引き金になって、うつ状態なることをいいます。反応性うつ病、軽症うつ病、仮面うつ病などがこれに入ります。
|
内因性うつ病 |
心因性うつ病 |
原因 |
生物学的要因 |
心理学的要因 |
発症の契機 |
脳内の変化により発症 |
環境、依存、神経症的な面が強い |
睡眠障害 |
中途覚醒・早朝覚醒(睡眠不足) |
入眠困難、不安定睡眠 |
日内変動 |
朝、起きられない
夕方に向けて改善 |
不定、あるいは
夕方に向けて悪化
|
抗うつ薬の効果 |
薬の効果大 |
薬の効果小 |
心理療法効果 |
心理療法効果大 |
カウンセリング、心理療法効果大 |
★「うつ病」の実際には内因性とも心因性ともつかない曖昧な「うつ病」もあります。それぞれのケースに応じた対応が必要となります。医療機関で処方される抗うつ薬での対症療法と合わせて、個人々のケースに合わせた心理療法での根本的な原因の解消と症状の改善が最も効果的です。
●うつ病の種類 ■うつ病の治療はこちら
(反応性うつ病)
社会生活での精神的ストレスなど、心理的な原因が引き金になって起こるものです。きっかけになった原因(仕事、学業、人間関係等)があるていどはっきりしているものをさします。身体に現れる症状が多く見られることも特徴のひとつです。
反応性うつ病は、抗うつ剤が効きづらいこともあるようですが、発症の原因が明確であることが多いため、原因にアプローチし、うまく環境を調整をすることができれば、改善に向かいやすいともいわれています。
(軽症うつ病・仮面うつ病)
身体に現れる症状や不調(不眠・体調不良)が目立ち、心の症状(気分の落ち込みやゆううつ感)が少ない為に「うつ病」とわかりにくいのが特徴です。「やる気が起きない」「気が滅入る」「落ち込む」といった症状は似ていますが、全体的にその症状の程度が軽く、不眠、食欲不振、身体のだるさ等の体調不良が先に自覚されてしまうので、日常生活や仕事に対してはむしろ頑張ってしまいます。
仕事や日常生活などは一応支障なくこなせていて、他人からみるとほとんど変化がないように見える状態から、別名「仮面うつ病」と呼ばれるます。
★「うつ病」は軽い症状のものから、重い症状のものまでが、連続的に存在していると考えられています。軽症うつ病でも時間が経過すると「重いうつ病」になるということは実際にあることです。
軽い症状のうちに早く対処して、重い症状を予防することが大切です。
(躁うつ病)
内因性うつ病にみられ、「気が滅入る」「落ち込む」など、ゆううつな気分の「うつ状態」の後に、愉快で爽快な気分の躁状態とを繰り返します。
躁状態の時は、気持ちが高ぶり、自信に満ちており、「うつ病」「うつ状態」から回復したようにも思われるために、なかなか病気と気づかれません。
●老人のうつ病
高齢者の場合、身体の衰えや喪失体験などのストレス、身の置き場の無さや記憶力低下などからの不安感により、身体の症状が出たりして「うつ病」になりやすいといわれています。症状の現れ方としては以下のようなものが多く見られます。
*不眠が続く(人によっては過眠になることもある)
*何でも悪いほうへ悪いほうへと考え心配する
*やる気が起きない
*あれこれいろいろな思いが浮かんで考えがまとまらない
*食欲がなくなる(反対に過食になることもある)
*疲れやすい
*いつも憂鬱な気分で、特に理由も無いのに泣けてくる
*前まで好きで楽しんでいたものに興味が無くなる
*焦ったりイライラしたりする
*自分を責めて、「生きている価値がない」などと思う
*自殺を考える
★家族や周囲の人が気づいてあげることが、改善への手助けに大きく役立ちます。
●子供のうつ病
子供の場合も、大人と基本的には同じですが、心身共に発達過程にある子供は、落ち込んだ気分を大人ように言葉で表現できないことが多く、身体症状や行動として現れる場合が多いようです。
また、不安や行為障害、多動(落ち着きがない)、学習障害などと関連して起こることがあります。
*身体症状として食欲不振・体重減少 (または成長に伴い体重が増加しない)
*吐き気・頭痛・腹痛・めまいなどを訴えたりします。
*行動の現れ方として、 イライラ、注意力低下、集中困難、寡黙、不登校、引きこもり
成績が落ちる、不眠・睡眠過多などがあります。
*家族が早く気づいてあげて、小児科医や各種相談窓口などに相談することが大切です。
家族だけで悩まず信頼できる誰かに相談することが改善への手助けに大きく役立ちます。
●女性のうつ病
女性は、男性の二倍ほど、「うつ病」になりやすいと言われています。
「うつ病」の発症の要因が女性ホルモンと関係していて、女性特有のストレスを感じやすい月経前、妊娠、出産、子育て、更年期には症状が出やすくなります。
(月経前うつ病)
月経の十日前くらいからイライラし、落ち着かない、怒りっぽくなるといった症状があらわれます。慢性的に続くと生活に支障があらわれるようになります。
(産後うつ病)
産後二〜三週間以降に、イライラするなどの精神症状があらわれます。
だるさや頭痛などの身体の症状だけが強くあらわれることもあります。
(更年期うつ病)
閉経前後、卵巣機能の低下によって、女性ホルモンの分泌量が減少するため、自律神経失調症状(不定愁訴)が、あらわれます。
ゆううつになったり、落ち込んだり、こころの変調もあらわれます。
■うつ病の治療
★早期に発見し適切な治療を行えば、短期間でも治る病気です。治療が遅ければ遅いほど回復するには時間がかかってしまいます。早期な発見と治療が大切です。
★保健所や精神保健福祉センター、児童相談所、各種教育機関などでも相談が可能です。専門の
医療機関等の受診前に訪れてみるのもいいでしょう。
★家族・周囲の人の理解と協力が大変重要です。
(病気だという事を理解してあげて下さい)
★「怠け者」、「だらしない」と責めたり、また逆に「しっかり」、「がんばれ」等の 「励ましの言葉」
も余計に精神的な負担をかけて、本来が生真面目な性格の患者を追い詰めてしまうことにな
ります。
★ ゆっくり休養、治療のできる環境をつくってあげてください。
★過剰な思いやり、援助はひかえて、薬の服用等のチェックなど、医師や専門家等の助言に基
づいたサポートにどめましょう。
★自殺には、常に気をつけてあげましょう。
(日本人の自殺者の半数がうつ病患者であると言われています。)
●うつ病の治療には、「休養」「薬物療法」「精神療法(心理療法)」などの方法が行われています。
●「休養」 休職や休学、しばらく家事から離れる等、ストレスの環境や、心理的ストレスの状況から離れて、心と体を休める意味で大きな効果があります。ただし、十分な周囲の理解と協力や専門家の指導のもとに、ある程度長期間をかけて行う必要があります。精神的に不安定な状態での休養は症状の悪化を引き起こしかねませんので、必ず医師や専門家の指導、他の治療との併用されての「休養」が望まれます。
●「薬物療法」 医療機関で処方される、抗うつ薬 、抗不安薬、 睡眠薬などの投薬による治療です。うつ気分の改善、 不安や緊張の軽減、不眠(睡眠障害)の改善などを目的とした対症療法で、症状の緩和、軽減に効果があります。
★医師を信頼して、医師の指導のもとに正しい服用を守ることが大切です。
(自己の判断で中止、服用量の増減をは治療を長期化させる結果となります)
★薬物療法での対症療法は、即効性のものではありません。ある程度の服薬治療期間が必要
です。服薬による症状の変化や、副作用等、気になる事は医師、薬剤師に相談することが重
要となります。(薬の効果、副作用等を自己判断するのは避けるべきです)
★薬に効果があるのと同様に、副作用は避けられないものがあります。
★薬物療法の長期化により薬物への依存にも注意が必要です。
●「精神療法」(心理療法) 症状の背景にある精神的・心理的な問題を解決する療法です。また、不安や緊張を解消していくことで心の負担をを取り去り、患者さん個人の心理面での改善による症状の軽減と、根本的な「うつ病」の解消を目的とした療法です。カウンセリングを基に以下のような各種手法が用いられます。
★心理カウンセリング
★催眠療法、
★認知行動療法
★精神分析的精神療法
★自立訓練法
★音楽療法
★芸術療法
★薬物療法との併用も可能です。
★早期に発見して適切な治療を行えば、短期間でも治る病気です。早期な発見と治療が大切です。
|